海外への指示・依頼時の日本語②

海外への指示・依頼時の日本語②

 

前回に続いて、繊維産業の日本語に関して、今回検品用語に関して書いていきたいと思います。

 

今現在、このサイトの繊維業界用語辞書機能  “WORD” の中には、450語以上の検品用語が有ります。

現在、海外で展開されている日系検品工場の言葉がこれで網羅できているかは、必ずしもではありません。

各社、メインの検品業務によりその内容にあった項目が記されているかと思います。

会社によっては、海外場所ごとに異なる場合もあります。

会社によって、又、検品場所によって分類も、使用言語も必ずしも同じではなく、例えば同じ欠点でも、表現・分類が異なる場合もしばしばです。

 

今回、辞書機能を整理していて、それ以前に海外の検品工場さんとのやり取りも含めて、気になった部分に関して書かせて頂きます。

 

実際の検品現場において、私が困っていることでもあるのですが、“欠点理由“に関する部分です。

 

例を挙げてみます。

ベア天竺のTシャツで、

  • 袖付け部分、エクボや、シワが有った。
  • クルーネックの衿ぐりが、歪んでいて、左右対称になっていない。
  • 裾部分が波打っている。

これに対して、欠点理由が “ Pressing defect” と添付カード(製品の絵が描かれていて、欠点箇所と理由が記されているもの)に記されている場合が有ります。

検品員の方が、プレス問題であると判断されたからでしょう。

でも実際は、

R① 袖付け時点で、袖山のいせ込が足らず、AH部分の身頃を少し引っ張って縫い付けてしまい、後で身頃の生地の弾力による戻りで、袖山の生地分量が多過ぎて起こっていた。

R② 衿ぐりのバインダー付時点で、身頃の生地の振り回しが適切にされず、部分的に引っ張っている状態が発生していた。

R③ 裾上げの平2本針裏飾りの時点で、身頃を引っ張って縫ってしまい、生地の伸縮の回復に伴い、波打ちが出てきた。

と言うものでした。

 

実際、検品工場にて、その欠点の発生原因を特定することは、非常に難しい事です。

上記の例以外でも、染色関係の欠点の発生原因を特定したり、編立原因か?染色原因か?整理原因か?の分類も、それぞれの製造工程に詳しく、経験が無いと、なかなか判定することは難しいと思います。

 

ここで、考えて頂きたいことは、“欠点の原因 又は発生工程” ではなく“欠点の現象”を書いて頂くことではないかと考えます。

 

Pressing defect と書かれてしまうと、修理対応として、再プレスに回されてしまいますが、本来の原因ではないので、多少改善できたとしても、根本的な修理にはなりませんし、工場の改善にも結び付かなくなってしまう可能性が有ります。

 

上に書いた①~③が、“欠点の現象”です。

“Pressing defect” は、推測された“欠点の原因又は発生工程”を示す言葉です。

“欠点の原因又は発生工程”を検品工場で推測するより、“欠点の現象”を明確に指摘していただく方が、良いのではないかと思うのですが、皆さん如何でしょうか?

 

前回①でも書きましたが、この辺も従来のやり方を見直して、標準化した方が効率化につながると思うのですが、なかなか従来の業務のやり方を変更するのは難しいのが現状です。

 

現在の検品報告書の項目に、“欠点の原因 又は発生工程” と“欠点の現象” が混ざって分類されている物がシバシバ見受けられます。

 

是は、検品会社さんだけの問題ではなく、検品依頼者側からも注意が必要なことではないでしょうか?

 

依頼者サイドからの要求が有れば、検品会社さんも変わっていくのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

 

B品率を下げることは、メーカー・生産者双方にとって利益になることです。

検品で各商品の欠点発生の特長を掴み、改善していく為にも、上記のことを皆さんで考えて頂ければ、改善していくのに助けになるのではないかと。

 

起こった問題を明確につかみ、技術・経験のあるスタッフがその原因を究明して、効果のある改善策を試してみるというサイクルが出来れば良いですよね。

 

上記の改善には、パターン補正や、ソーワーの手の動かし方、パーツの持ち方、ミシンやアッタチメントの調整等々が思いつきますが、Pressing defect と表記されたり、分るされてしまうと、なかなか改善策にたどり着かなくなってしまうかと。

 

皆さんで、考えて頂ければ、幸いです。

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