海外生産時の、感覚的・官能的な内容の伝え方
海外生産が主流の繊維業界において、感覚的な言葉の伝達問題は、良く起こります。
生地の風合いや、色の修正などで、相手に理解させることが難しかった経験は、みなさん有るのではないでしょうか。
もっと日常的にトラブルのは、色名ではないでしょうか?
各アパレルの下げ札に記載されている”カラー名”を訳しても、海外の工場で誤解してしまうことはよくあります。
下げ札のカラー名は、各アパレルさんが社内で有る程度ルールを作られて、決められていると思います。
それを補足するのが、”色番”なのですが、これがまた混乱に拍車をかける場合が有ります。
アパレルからの発注・指示が、下げ札と連動されていて、”色番+カラー名”で出されます。
これを、日本国内か、海外サイドでも翻訳しなければなりません。
ここで、トラブルが起きます。
例えば
① C/# 86 コン (白とのボーダー)
C/# 87 ネイビー (無地)
② style A style B
C/# 01 白 C/# 02 ホワイト
* style A とB は共通素材で、色目は同じであるが、style A は、プリントの部分使い有り、style B はソリッド。
ここでの注意点は、商品カラー名 と 仕様書/生産段階で使われる生地などのカラー名が混乱してしまうことです。
これは、感覚的なニアンス以前の問題ですが、単純に直訳してしまうと現場で不必要なミスが起こるパターンです。
なので、下げ札や発注で付ける”色番+カラー名” と”生産段階で使用される”色番+カラー名”には、注意が必要です。
次に、カラー名の翻訳に関して。
私たちの業界では、カラー名を片かなで(和製英語も含め)英語表記する場合が良くあります。
オフホワイト
ネイビー
グレージュ
ワイン
これをそのまま英語表記すると、意味が通じない場合も多々あります。
さらに、色の言語の対応範囲が、各国によって違う場合も有りまし、中国の場合地域によっても違う場合が有ります。
例えば
① 日本人が”オレンジ”と感じる色を、”Pink”と感じて、表現される場合も有ります。
② 中国人が”肉色”と表現して、赤味の色を想像したのですが、日本で言う”肌色”
今までの海外生産が、中国が殆どであったとこから、メーカーサイドが、日本人の色名と色の関係を理解している場合が多いのですが、アセアン内で、対欧米を主力として生産してきたメーカーに、直訳的な英語のカラー名で指示すると、混乱が生じます。
逆に”Grapefruit” と言われて、一般的な日本人は黄色味をイメージしますが、”ピンク系”の色です。
中身がピンク系のグレープフルーツが有りますが、あの色を指しています。
海外でよくパックで売られているグレープフルーツジュースは、ピンク系なのですから。
各国の民族文化で、カラーに対する感性も違いますし、海外生産の時には、トラブルを避ける注意が必要かと思います。
カラー以外も含めて、言語のみの意思疎通は、混乱や間違いに繋がり、納期等々にすぐに影響しますから、トリムカードの準備は中国生産以上に、アセアンにおいては必要かと思います。
次に、ビーカーなどに対するコメントに関して。
日本人同士でもトラブリがちな部分です。
日本からコメントのニアンスをそのまま伝えても、なかなか結果が得れない部分です。
中国人は、ある一定期間後、そのニアンスをくみ取ることについてきましたが、アセアンではニアンスで伝えるより、もう少しだけ丁寧に伝えることに気を配った方が、結果が出しやすいかと思います。
例えば
青味を増やす/減らす 赤味味を増やす/減らす 黄色味を増やす/減らす
濁らせる・くすませる/鮮明にする 濃度を上げる/下げる
この程度の表現でも、再ビカーの精度は上がると思います。
よく、”青味30%アップ” というコメントが有りますが、30%が曲者で、返って混乱しがちです。
この”30%”は、別に染料配合上の問題でなく、根拠のない気分的な数字だからです。
あと、”元色に合わせて下さい” これも、禅問答のような指示で、お客さんが望んでいるカラーの修正方向が伝わりません。
付け加えて、染色する生地の特性と、全く異なる素材でのカラー指示も、良く見かけられます。
マットな生地に対して、光沢のあるサテンの生地や、DICのコーティングタイプ(光沢有り)の紙での指示は、中間に入った日本人でも頭を抱える場合が有ります。
”お客さんは、何を求めているのか??”
色の話の次は、生地の風合い等の触感に関する指示です。
私は、以前書籍で見つけた言葉で、対応しています。
業界用語ハンドブックなどでも、見つけにくい言葉です。
こし Stiffness
はり Anti-drape-stiffness
ぬめり Smoothness
しゃりみ Crispness
ふくらみ Fullness & Softness
きしみ Serooping feeling
しなやかさ Flexibility with soft feeling
これも、彼らの母国語ではないので、どこまで理解してもらえるか?は甚だ疑問ですが。。。
当然現地の人でも、勘のいい人と、そうでない人が居るので、ニアンスが伝わるかどうかは、個体差が結構幅が有ります。
日本語は、感覚的、官能的表現の豊かな言語と思います。
又、色の名前においても、大和言葉を含め、豊かな語彙を持っています。
四季を持ち、自然豊かな日本人が接する色数と、年中常夏の国や、砂漠の国の人が接することのできる色数は、かなり差が有るからではと、思われます。
その為、ニアンスを海外の文化が違う人々に伝えることは容易ではないことを理解し、注意しなければならないと思います。