”斜行”って何?? 地の目のこと?製品の捻れのこと?

天竺のTシャツ等の洗濯後の形態変化の問題はよくあります。

ここで、良く混乱されている言葉に”斜行”と言う言葉が有ります。

A)生地での状態、又は製品になった状態での、タテ目(ウエール) と ヨコ目(コース)が、垂直でなかったり、水平でなかったりすることを指しているのか?
B)それとも、製品状態での洗濯後、の裾と脇線で発生するネジレなどを指しているのか?

ネットで検索すると、A)のことを述べていて、B)のことを”洗濯後の斜行度”と表現しているのを見かけます。
検査機関などでは、生地の検査項目には、”斜行”と言う項目は、一般的には有りません。
製品の”耐ドライクリーニング性”の項目に、”洗濯後の斜行度”という項目は有ります。

裁断時点や、製品上がり時点、洗濯後などで、生地の形態が変化することと、生地や製品の地の目が垂直/水平であることは、関係が有りますが、”斜行”と言う言葉を混乱して使ってしまうと、問題解決や、理解に大きな障害となってしまいます。

今回は、このことについて述べたいと思います。

B)の問題は、カットーだけでなく、布帛でも起こっています。
先染めのウールビエラの生地(単糸使いで、ザックリ織られているもの)で、ワンピースの左脇線が前身側に捻れてくることや、ジーンズの左脇線が製品洗い後、同じく前側に捻れてくることなどです。
布帛なので、タテ目は垂直に通っています。
これを止めるために、タテ糸とヨコ糸を、撚糸方向を異なるものを使用して交織して、トルクの中和を計る生地も有ります。
布帛の場合、A)に関しては、生地としてはタテ目とヨコ目が垂直/水平にセットされており、生地がリラックスしだすと(裁断されたり、洗われたり)、糸の撚りが戻ろうとする力で生地や製品の形態が変化することです。

一方カットソーではどうでしょうか?
一般的にA)及びB)の問題が起こりやすいのは
a) 単糸使いの天竺
b) 単糸使いのインレイ
c) 単糸、又は引き揃え使いのカノコ
d) 軽めの目付の裏毛で、着丈の長いもの(ロングパンツとか)
が上げられます。
これ等は全て、シングル組織の編み地です。
基本的に、W組織の編み物は、表のトルクと裏側のトルクが相殺されて、比較的捻れの現象起こりにくいと言えます。
但し、表裏の組織や糸使いが異なる場合、トルク差が発生して、捻れが発生する場合も有りますが。

ここで、上記のa) ~d) の生地の生まれから、生い立ちを、少し説明させてください。
編み機から編まれて下りてきた生地(生機)の状態は、図1のような状態です。

丸編み機から出てきた状態で、既にタテ目とヨコ目は直交していません。

図1

生まれたての状態で、既に角度を持っています。

布帛は1本の横糸が挿入され、一段ずつ整形されていきますが、現在の通常の丸編み機では、一度に90段や102段が編み下されるのです。

理髪店の広告塔をイメージしてください。
くるくる回っているヤツです。
あれと同じ様に生地が編み下がってくるのです。

このチューブ状の生機を、染色後(プレセットを行う場合は、染色前に)開反して、平面にします。

すると、図2の様に、タテ目は通りますが、ヨコ目はさらに角度を持ちます。

これは、通常開反するときの目印に、編み針を1本抜いておき、開反線を作るためで、結果、平面になった生地はタテ目が通ります。

図2

 

布帛と条件が大幅に異なるのは、糸の撚りの解放に向かうトルクだけなく、編立時点で、生地幅に対して編み口分の長さの傾斜が、最初から持っているということです。

実際の例で言うと、180cmの生地幅に対して、4.5cmの落差を持っていると、イメージしてください。

番手、編み機によって、幅と段差は異なりますが、例えば30/-天竺の場合、4-5cmの段差が出来ます。

以前、あるアパレルの基準で、単糸天竺でも、タテ目垂直、ヨコ目水平と言うのが有りましたが、無理やりセットでそれを成し遂げても、縫製加工中や洗濯時に、生地がリラックスすれば、元の生まれた形に戻ろうとして、形態変化を起こしてしまいます。

図3

 

図3が、一般的に起こる、生地がリラックスした時の形態変化の方向です。

製品の場合、Tシャツなどでは、肩やアームホル、脇などでカットパーツを接いでいます。
その部分に、縫製の接合が発生します。
オーバーロックなどで縫われた箇所は、ある種の力止めになり、生地単体の様には形態変化はしません。
裾の部分が、比較的フリーになるので、脇線が捻れて前身に来るのが目立つ結果になります。

現場サイドの対応としては、検査機関ではなく、縫製工場に a)~d) の生地が入荷した時点で、簡単なスキューと縮率の試験を行い、生地の修理、パターンの補正、マーキングの方法改善などで、事故を未然に防ぐのが、合理的かと思います。

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