”誰がアパレルを殺すのか” を読んで ⑨

”誰がアパレルを殺すのか” を読んで ⑨

非SPAのススメ

”経費削減・原価率ダウン” の命題の元、アパレル型SPAは、商社・国内OEMメーカーをスキップしようとしてきました。

なぜ、商社はスキップされる羽目に陥ったのでしょうか?
又、なぜ問屋機能が消滅しつつも有るのでしょうか?

現在、元々卸業である商社・問屋は
(1) 製造業と小売業の間に立ち、川上/川下の情報の交差点であったのが、川下ばかりに目を向け、川上に対する関心を無くし、紡績>織・編み>染色 の部分に関して、知識も情報も浅くなってしまった。
(2) ”生産ロット・生産期間” の川上/川下のズレに対して、リスク分散・資金負担機能を持ち、両者をつないでいたが、”在庫は悪” の呪文の基に、在庫を持たなくなり、単なる代理店業になってしまった。
(3) 顧客に対する与信機能の条件が厳しくなり、大手に偏りがちになったが、逆に大手は資金的機能を自己解決する力を持ってしまっていた。
と言う流れで、商社・問屋が本来有していた機能が、海外の誰かが受け持ったり、川下側でカバーされたりしてしまい、挙句の果てに不要論。。

前にも書きましたが、アパレル型SPAで、特にファッション系・エレガンス系で問題になってくるのは、(2)の部分です。
素材の生産ロットと、マーケット需要部分のズレを、吸収するためには、素材の集約、同一化を図らないと、製造できません。
このことが、多ブランド化の中で、素材の同一化を引き起こし、ブランドの商品差別化を無くしてしまいました。

又、商品差別化ではなく、低価格戦略に頼ったため、コスト的に対応できる素材に集中もしてしまいました。
2000年代中旬までは、素材の差別化が、中国にも要求されていましたが、2010年ごろから低価格にするために、値段がハマる素材しか使えなくなってしまったのです。
具体的には、婦人服カットソーでは当初 ”リオセル””セルローズ系複合素材” が要求されていましたが、最後はT/Rしか価格的に使えず、全てT/Rになってしまいました。

これでは、ファッション系・エレガンス系SPAは、共倒れして当たり前ですよね。
カジュアル系であれば、コモディティー化は有りだと思うのですが、ファッション系・エレガンス系で、コモディティー化してしまったら、そりゃ消費者は興味を無くしますよね。

当然、日本の繊維産業の中での、旧態依然な商習慣は改められなくてはなりませんが、商社・問屋が、必要とされていたファンクションを放棄してしまったことが、ファッション業界の保守本流であった、コンサバ・エレガンスのコモディティー化が進み、共倒れを加速してしまった部分をあることを認識する必要が有るかと思います。
もちろん、マーケットのカジュアル化の潮流は有りましたが。

”日本発信のブランドで、海外市場へ” と言われて久しいですが、多くのブランドがトライし、その多くが撤退を余儀なくされてきました。

もし、日本発信を考えるなら、日本国内で無くしてしまいそうになっているファッションを構築するための機能を、もう一度考える必要が有ります。
これは、アパレル型SPAにとっても、非常に大事な部分ではないかと思います。
また、さらにその先来るであろう、衣料品の ”コモディティー化/パーソナル化の2極分化” にも、大きく影響すると、私は考えています。

”非SPAのススメ” とは、ファッションの多様性を考えるとき、もう一度アパレル産業の中において、それぞれの機能を取り戻すべき部分が有るのではないかと言う、私の考えです。

小売り ファッションが好きな人が、自分の扱う商品に興味をもち、消費者と商品を通してコミュニケーションしていく。
アパレル マーケットと対話しながら、企画・品質を第一に考え、マーケットの規模に有った戦略を立て、それを具現化していく。
生地問屋 川下/川上の間に立ち、情報と物の交差点の役割を担う。
商社 海外生産を中心に、産地情報を持ち、案件に対して素材・加工・物流の組み合わせの最適化を図り、業界全体をリードしていく自負を持つ。
製造 マーケットインの感覚を持ちながら、川上ならではの情報発信機能を持つ。

理想論過ぎて、書いていて、メチャクチャ恥ずかしいのですが。。。
最近、こんな青臭い話が出ないほど、業界が荒んでいるのが、寂しい限りですが。。。

10月8日放送(関西?のみ。東京では放送されていません)された、関西の人気番組 ”そこまで言って委員会NP” のテーマは”斜陽産業”でした。 *Youtubeで見ることが出来ます。
筆頭が、ファッション産業で、後出版業界、音楽業界、大手家電業界でした。

パネラーの一人である原田 泳幸氏(元アップル>マクドナルド>ソニー)のコメントが、
”コモディティー扱うECとの棲み分け”
でした。
実際は、販路がオムニチャンネル化が進むため、コモデイィティタイプではない商品も、店舗だけではなく、通販・ネット販売に広がっていくと思いますが。
でもこの提言、SPA化するかどうかは別として、非常にスッキリと、シンプルに共感できるのですが。

非コモディティであろうとするならば、非SPAにしておかなければならない部分が必要ではないかと思います。
縫製は、1枚から生産出来ますが、素材面の製造ロットを考えると、ファッション系・エレガンス系では、日本ブランドのSPA(素材までの垂直統合)は、市場規模からは、無理です。
だから、旧態的な商習慣を排して、それぞれの本来の機能を取り戻す必要が出てくるかと。

価格競争を、まだ続けますか?
オバーストアー・過剰供給が、これほど明らかな業界において。
販路のオムニチャンネル化を考えても、店舗購入が確実に減るであろう今後に対して、急速な店舗閉鎖が必要です。
店舗整理の中で、非コモディティ化した商品揃えで、どのように生まれ変わりますか?
それとも結果的にコモディティ化した商品ぞろえで、価格競争という消耗戦を続けますか?

トイザラスを日本上陸させるためにアメリカは外圧を掛け、大店舗法を緩和させましたが、そのトイザラスが本国で、アマゾンに市場を奪われ終焉しました。
玩具と衣料品の違いは有るのでしょうか?
もう後が有りません。
このままでは私も含め、皆さんが年金がもらえる様になるまで、この業界は持ちません。

次回は、マトメと言うほどの物でもないのですが、余りにもグダグダこのテーマで書いてきたので、取りあえず中〆で。

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