品質に対するコストとダメージコントロール

品質に対するコストとダメージコントロール

商社や、直貿で仕入れを担当されている方々は、日々品質問題でストレスを感じられていると思います。
毎日毎日、モグラ叩き状態の連続で、お気持ちが休まることのない日々が続いておられると、推察いたします。

良く出る話は
① コストダウンで、人員が減らされて、手一杯。
② 以前に比べて、品質レベルが下がっている様に思う。
③ メチャクチャ忙しいのに、儲からない。
実はこの状態は、3つとも非常に深い相互関係があります。

今のアパレル業界全般の現状を、整理してみましょう

A) アパレル
一部のアパレルを除き、マーケットの縮小に伴い、ロットは減っているが、品番数が減っていない
価格競争が激しい為、仕入れコストを下げなければならない
人員削減で業務が増え、企画や仕様の業務に十分時間が割けない
時間が無いので、仕事を流すだけになったり、ヤッツケがちになりがち

B) 商社・直貿仕入れ担当者
要求価格が厳しい為、より安い産地・メーカーを開拓・選択しなければならない
従来中国がメインだったのに、実績や経験値のない工場とのやり取りがスムーズに行かず、ストレス倍増
商品以外にも、物流・貿易などで従来と状況が異なり、思いがけない地雷が存在する
コストカットで、品質管理担当者を置けなくなったり、派遣できなくなっている
時間的にも、経費削減上からも、海外出張が難しく、現場で起こっている状況を把握するのが難しい
第三者検品のインフラ状況などから、輸入後国内検品、修理が増え、業務量が増えている
検査機関の状況も同じで、国内試験が増え、試験が基準に達せず、再試験が多くなり、手間と経費が増加

C) メーカー (中国+アセアン)
従来、欧米主体だったので、日本マーケットに不慣れで、要求を理解するのが難しい
日本マーケットのロットに慣れていないので、ハンドリングのトラブルが起きる
取りあえず、実質の生産期間が短く、適正な工程間検査などが、疎かになりがち
人件費等のコストアップで、儲からない
環境問題から、環境に関するコスト(水、排水、ボイラー等)が増加しっぱなし
中国政府の化学工場閉鎖命令で、最大の供給元の中国染料メーカー減少、価格高騰、品質ダウン
10年近く前に中国華東地区で起こった環境改善の嵐が、山東省界隈でも吹きかけている

従来の主輸入国の中国のコストアップ + マーケットの縮小と価格ダウンの圧力。
これが起因となって、色々なところに影響が出て、日本の業界のみなさんが、疲労困憊状態。
この状況は、いつまで続くのでしょうか?
それとも、ずっとこのまま??

起因した原因を解決する方法は、当分見つかる当ては、全く見えてこない閉塞状態。
なので、合理的に状況を改善する対処療法を見つけるしかない状態かと。

悪循環の中で業界全体が、一度立ち止まって考えるべきなのですが、それも出来ない状況かと。

限られた時間(仕事一杯一杯)と、使える経費の中で、どの部分に時間と経費を掛ければ、省ける手間を増やせ、残せる利益を増やせるのか?

表題で上げた”ダメージコントロール”とは、トラブルが起こった時、損害(手間とお金)を最小限に抑える処置です。

問題対応の手間と想定外経費は、関係者を心身ともに疲弊させ、利益を圧縮します。

品質問題の発生 > 対応業務増加 > 納期等の時間問題発生 > ボートからエアーや、臨時開帳費など経費発生 > お客様の苦情・不審+疲労+想定外経費 > 合理的な改善策も立てられず、メーカー探しの”流浪の民”化するか、又ギャンブルで自然改善を期待して同一メーカーで継続していく

品質問題を100%抑え込むことは、上記のアパレル業界全般の状況からすれば、非現実的です。
予め、トラブルが出そうなポイントを絞り込み、出来るだけ簡単な方法で問題をあぶり出し、早期に対応して、ダメージを抑え込むことぐらいしかできません。

全ての品質問題を、検査機関や、検品会社に頼っても、コストと時間がかかり、ベストの解決方法にはなりません。
勿論、堅牢度などの判定は、検査機関に頼らなくてはなりませんが、簡易な方法で、ヤバイかどうかはつかめます。
企画段階から、ヤバそうなポイントが見えているものも有りますし、1stサンプル段階でも見つけるチャンスは有ります。
ただ、1stサンプル段階では、なかなか生地の問題が見えにくく、出荷前サンプルの検査機関の試験で初めて発覚する場合も多いです。
以前にも書きましたが、生産前生地試験では、生地の捻れや縮率検査等がされてない場合が多いので、その段階で発覚しづらい場合も有ります。

検査機関による製品検査は、問題が有る商品が市場に出回らないことに主眼を置いていますので、生産工程で早期に問題を発見する事ができるとは限りません。
この点に注目してください。

検査機関、第三者検品は、問題が有る商品が市場に出回ることを止め、消費者保護を目的としたファンクションであると理解してください。
決して、製造工程中に発見した問題を、輸入業者の被害を最小限に抑える方法で解決する機関ではないのです。
無論、原因究明の為に、検査機関に依頼しなければならないことは、多々あります。
でも、一番大事なのは、目の前で起こっている問題をいかにダメージを少なく、サクッと解決するかですよね。

本来、生地の品質は生地屋さんが、縫製は縫製工場さんが、二次加工は加工屋さんが責任持てばいいという、建て前は有るのですが、建て前言っていても、手間が減るわけでもなく、金銭的な問題も起こり、いいことはなにも有りません。

手間とストレスを減らして我が身を守るためにも、効率よく品質問題を圧縮する方法を模索・確立すべきです。

例えば、
インドネシアで生産された生地が、フィリピン縫製の為に、既に移動済み
本生産前確認サンプルで、製品の捻れが発覚
生地を修理の為に、インドネシアには戻せない

このような場合、フィリピンで対応策を考えなければなりません。
状況によりますが、裁断前なら、幾つかの改善方法が有り、その中から最も合理的な方法(併せ技も含め)を選択すれば、納期に多少影響が出ても、軽傷で済みます。

さらに、生地が上がった段階で、インドネシアを出る前に発覚すれば、もっと楽な方法が取れます。
検査機関に出さなくても、簡単な試験でヤバイかどうかを見つけられます。
勿論ロット問題等が有り、100%ではありませんが、検査機関でも100%保証できないので、同じですよね。
船便の都合で、インドネシアで修理していると、1週間生地到着がずれてしまうので、フィリピン入荷後3日間で修理した方が、SCDLに狂いが生じない場合も有ります。
生地の移動している間に、フィリピンで修理の準備をしておけば、実際あり得る話です。
修理代を、生地屋さんに払ってもらう交渉は要りますが。

問題の発生場所で解決するのが本来ですが、色々なダメージを考えて、後工程で対応改善できる場合も、結構あります。

さらに今後を考えて、生地上がり後、入荷時点などで、メーカーや輸入業者が余り負担が掛からない簡易な方法でリスクをあぶり出し、トラブル発生を抑え込むルールを確立すれば、担当者の負担やストレスの軽減、予定外経費の発生の圧縮につながると思います。
思いつくまま、色々な改善策や試験をメーカーにぶつけても、なかなか結果が出ないことはよくある話ですし、現場の状況を理解して、簡易で合理的な予備試験をするルール作り、そのメンテナンス維持が、手間と経費が掛からにことに成るではないでしょうか?
理屈は合っていても、現実的でなかったり、継続が難しいと、結果が出ませんしね。

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