”誰がアパレルを殺すのか” を読んで ②

”誰がアパレルを殺すのか” を読んで ②

前回書いた、海外生産場所からのヴューと、 ”誰がアパレルを殺すのか” に書かれていたアパレル・売り場の状況の変化との相互関係が見て取れると思います。

バブル以後起こった連鎖した変化と現象を見てみたいと思います。

川下 売り場 : 規制緩和による、売り場面積の増加競争

アパレル:

・売り場を埋める為のブランド多展開
・売り場を埋める為に、売れ残り、値引き当たり前での商品仕掛り
・売れ残り処分対応の為の、仕入れ率のダウン
・価格競争からの、設定販売価格のダウン
・仕入れ価格を抑えるために、海外生産出来る数量に上乗せ
・経費カットによる、リストラ、出張禁止
・人手が足りなく、十分な企画立案、検証が出来ない
・出張出来ないため、現場経験や研修が不十分
・サンプル作成、パターン作成等々が、アウトソーシングされ、本来社内で持っていた技術が霧散
・マーケットリサーチや、ヨーロッパ出張などが出来ず、情報収集を外部に頼り、企画能力がダウン
・店頭展開が細かくセグメントされた為、展開デザイン数が増える
・企画が間に合わず、デザイン提案できる仕入れ先をメインにする
・ODM型になり、他社ブランドとの差別化が出来なく、どのブランドも似たり寄ったりで、さらに価格競争に拍車をかける
・業務量が多くなり、十分な準備期間を設けずに製品化に入るため、納期までの期間も短くなり、トラブルが起こりやすい危険な状況での生産が行われ、問題が起こった場合、ハイコストな解決方法しか残されていない
・多数のデザイン展開の必要性から、差別化の為に、生地や二次加工に頼りがちになる
・更なる価格競争の為、差別化された生地も使用できなくなり、ローコストの横並びの素材しか使えなくなる
・新しい二次加工を取り入れようとするが、理解・検証が不十分なまま生産化し、トラブルが発生
・品質に関して、企画時点での十分な検証が出来なく、第三者検品や、検査機関での試験で問題発覚
・トラブルに関する経験・技術の蓄積が進まず、類似の問題点が続発
・経費削減から?直貿が流行るも、産地情報・工場適不適判断・貿易の知識・指示出し・コミュニケーションなどのツールが不十分で、業務量が増え続けるも、成果が出しづらい

川中 商社

・1990年後半から、海外生産が中国中心となり、且つ中国自体のキャッチ能力が向上したため、雑な指示でもそこそこの商売が出来てしまうようになる
・ここ20年間で、この業界に入った人たちの”海外生産=中国生産” であるため、特に非常に便利になった中国を使うことしか経験できず、本来の海外生産時に必要であった技術や、経験が無くなってしまう
・売上に対するプレッシャーから、川上は便利な中国に任せて、顧客のみに目を向け続け、仕入れサイドに関する情報や、専門的な知識が無くなっていく
・商材を見て、最適な生地産地、最適な加工場所を組み立てるという、商社本来の振り分け、組み立て能力が低下し、中国の貿易会社に丸投げや、ギャンブル的にメーカー遊牧民となる
・1990年台は、海外場所に技術指導員を配置したり、担当者が産地をリサーチが出来ていたが、2000年代後半から、コスト削減で、品質管理や生産管理にコストが掛けられなくなる
・中国のメーカーサイドに、現地採用の優秀な中国人(優秀過ぎた?)を配置したことにより、現地の業界動態の情報を握るべき日本人駐在員が直接生の情報を収集できなくなる
・多品種小ロット> 業務量増加 で、海外に出すアパレルからの指示を、スクリーンイング出来なくなっている
・アパレルと同様に、十分な研修・教育を受けるチャンスが無くなってきている
・業界を語れる人が減ってきている

川上

縫製

・取りあえず、縫製業が3Kとみられているので、人が集められない 
・日本からの指示が粗いので、修正サンプル回数が多い 
・なかなか修正コメントが来ない 
・支給付属の手配が遅い 
・製造コストもさることながら、管理コストが跳ね上がり、儲からなくなっている 
・染色工場の状況や、ロットの減少から、生地の品質・対応が下がり始め、余計に手間がかかる 
・生産期間が短すぎる

・値段がとんでもなく安い

染色

・2000年台中期から、環境コスト(ボイラー・汚水処理)が上がったばかりでなく、従来の場所で操業させてもらえない
・色々な新素材が来るが、情報が少ない
・染料メーカーが、同じく環境問題で閉鎖させられ、染料コストが上がってる
・大口のオーダーが無くなり、設備産業である染色工場を維持するのが困難
・中小ロットばっかりで、手間がかかるが、儲からない
・品質改善を言われても、打つ手がない
・人材は集まらない

編み

・織 ・職人が集まらない
・24時間の為、家族で対応もしばしば
・ロットが少なく、セッティングに手間が取られる
・開発反が、バルクに繋がらない

大型店舗規制緩和と、新しいビジネスモデルの想定外の伸び、それに対応しきれなかった15年間。
中国の経済環境の想定外の激変。

現状の日本の繊維業界に至るまでの理由と言い訳は色々並んでいきますね。

じゃー、どうしたらいいのか?を次に模索し始めたいと思います。

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