”誰がアパレルを殺すのか” を読んで ④
なんで、コストダウンと、生産期間短縮の為には、SPAが万能薬みたいに、誤認識されるようになってしまったのでしょう?
それは、”エセSPA&エセ直貿” が普通になってしまったから?
”エセSPA・エセ直貿” とは??
SPAが製造小売り業と日本語で言われ、川上~川下までの一気通貫と、情報の共有化で、素早く市場変化に対応し、販売機会の損失や、不良在庫のロスを押し下げることを目的に、小売りが製造をハンドリングする考えです。
あくまでも、店頭又は販売時点に対して、製造を最適化する考えです。
この考えは、決して間違っているるものではありません。
但し、その為には、小売りが製造を組み立てなくてはなりません。
しかし昨今のSPAや直貿をうたっているアパレルの中には、製造管理どころか、供給に関しては全てメーカーに分投げで、コストのみに関心を持ち、川上に対しての無関心が有ります。
又は、表面上輸入時点は、海外から商社を押さずに自社で輸入していますが、商社機能を第三者のアウトソーシングしたり、輸出サイドに押し付けている場合も有ります。
輸入業務のみ、自社内でやっている様になっていますが、それ以前の商社や、OEMメーカーの機能を、単に日本国外に置くか、又は決済には絡まない生産管理会社に振っただけなのです。
”誰がアパレルを殺すのか” P131 より
<一般的なアパレル企業> : 製造工程が分業されているため、コストがかさむ
工場 → 商社・OEMメーカー → 一般的なアパレル → 百貨店などの店舗 → 消費者
<従来のSPA> : 広告宣伝も兼ねた大量の店舗がコストに
提携工場 →→→ 従来型のSPA → 自社店舗 → 消費者
<オンラインSPA> : 店舗を介さず直接顧客に商品を届ける
提携工場 →→→ オンラインSPA →→→ 消費者
ここで、先ず問題なのが、”工場” 及び ”提携工場” です。
この図でスキップしているのは、”製造部分”に関して、”素材メーカー+加工メーカー”を一括りにしてしまっていることです。
当然、アパレル又はSPAが、国内の生地を手配し、海外生産している場合も有ります。
しかし、コストダウンを主目的とした海外生産を考えた場合、当然海外調達で、少しでも安く作ろうということになります。
どうして、”素材メーカー+加工メーカー”の部分に関しての関心が無くなってしまったのでしょうか?
それは、2つのことが考えられます。
① 殆どの輸入先が中国であったから。
元々歴史的な国営企業からの流れで、中国企業が社内又はグループ内で ”織/編み > 染色 > 縫製” の一貫体制を築いてしまったり、素材供給ルートを自分で構築してしまったりしたことから、製品オーダーをすれば、提携工場が生地・付属等からすべて、対応できるようになってしまった。
② 韓国のOEM(デザイン提案まで含めたODM)メーカーを使い、”韓国素材 > 中国縫製” で製品が供給されるため。
中国の外貿公司を使っても、”素材アレンジ > 縫製工場セティング” で製品が供給される。
つまり、川上に対して関心を持たなくても、製品供給がそこそこなされたのです。
元々、国内生産が主流であったころは
紡績 → 産元商社 → 生地問屋・付属屋 → アパレル(製品問屋) → 百貨店などの店舗 → 消費者 ↳縫製工場
の流れで、アパレルは素材・資材の手当てを自ら行い、提携縫製工場に委託加工していました。
又素材のリスクにおいても、紡績・産元商社・生地問屋がそれぞれリスク分散しながら、中間在庫を持っていました。
それが、海外生産に移行していくうちに、製品オーダーすれば、全て自動的に海外から供給される、非常に便利な状況が生まれたのです。
この状況で、国内のアパレル及び商社に起こった現象は
・衣料品の企画において、重要な要素の原材料部分に関して、直接対話しなくなってしまい、距離が離れてしまう。
・これは、商社も同じことが起こり、”素材+加工” の組み立ては、現地工場に丸投げになり、産地状況の把握力が弱まる。
勿論中間時点での素材に関する品質確認や進行状況の確認は、生産管理と言う名のもとにされてはいましたが、資金リスク、品質リスク等々の管理や組み立ては、彼らの手から離れてしまったのです。
このことが、後々、中国コストアップに伴う”チャイナ+ワン”への転換時に、大きなしっぺ返しを受けることになります。
SPAを行うには、本来、情報の共有化が前提となりますが、”エセSPA”によって”分断されている業態によるロスの排除” ではなく、本来各自持っていたファンクションの能力を無くしてしまったのです。
次に、マトモなSPAってなんなの?を考えたいと思います。