”誰がアパレルを殺すのか” を読んで ⑦

”誰がアパレルを殺すのか” を読んで ⑦

規模による低価格戦略

GAPやH&M,ユニクロなどのグロ-バルファーストファッションは、ワールドワイドSPAの手法を以って、低価格戦略を進んできました。
でも今、この低価格戦略に行き詰りが見え始めています。
これらの会社は、流通の無駄を省き、規模による製造コストのダウンを実現し、従来では考えられない低価格を実現し、既存の商習慣やカテゴリーを破壊してきました。

でも、更なる低価格に使える手法がそろそろ底をつき始めたのです。
流通・物流の合理化はすでに手を尽くされ、低賃金の生産国シフトも、物流コストとの兼ね合いからますます困難に。
カラッカラに絞り切った雑巾で、”もう出ません”状態を、雑巾自体が壊れるほどまだ絞る力を強めている??現状。
綿花などは、世界市場相場価格が出ているので、そこから計算しても不可能な?不可解な?価格でのオファーが、いまだに溢れ返っています。
まー、中国では、在庫調整の”トンでも価格”は、常時出てきますが。
又、生産性向上でのコストダウンって、当然限界ありますよね。
この辺、商社の方は、知っていても知りたくない。
もっと安く作れの一点張りの時代が随分続きましたが。。。

低コスト国への流浪の旅
日本 :  国内 > 韓国・台湾 > 中国 > アセアン > 南アジア
ヨーロッパ :  国内 > スペイン > トルコ・モロッコ > 東欧 > アフリカ沿岸・中国 > アセアン > 南アジア・インド洋
アメリカ :  国内 > 中央アメリカ > 南米 > アセアン > 中国 > アセアン > 南米・南アジア

でもこれって、教科書的には過渡期で、全世界の均等化の時期が来るはずですよね。
昔々、大学の経済学の授業で習った関税・非関税障壁の撤廃の自由貿易の目的とは、
 ”世界において、国家間の格差があらゆる問題を引き起こすので、人・物・サービス・お金 の往来を自由にして、

 格差をなくし、皆で豊かに成りましょう。 ”
なので、いずれはコスト格差が縮小していくはず?

ということは、世界一周すれば、そこまでという道理が有りますが、貿易格差の前に、情報格差の是正が恐ろしい勢いで襲ってきてます。

また、このあたりのカジュアルテーストのマーケット需要もお腹一杯になりつつあり、もうそろそろって感じも有るのですが。
日本においても、就業時間の縮小から、フォーマル(会社に行く服)衣料の着衣時間の減少により、カジュアルウエア―の着衣時間が増え、それが追い風になりマーケットの変化ももたらされましたが。
今は、家での時間の増加により、ステテコ?モンペ?的な部屋着ライクなアイテムがヒットしている傾向も出てきていますし。

基本的に、カジュアル系が、ファッション系・エレガンス系よりも、SPA化しやすいことを以前書きましたが、カジュアルテイスト市場規模が拡大基調であったことと、一方が縮小傾向であったこが有るかと思います。
さらに、ファッション系・エレガンス系の方が、素材傾向の変化が激しく、規模的な量化が難しく、規模でのコストダウン化が難しい性格を持っていると思います。

そこを無理に量化による価格ダウンをしようとして、対応する素材が同一化し、ODMでさらにデザインまで同一化してしまった部分にも影響があったと思います。

この辺も踏まえて
アパレル型SPAに関して、つらつらと考えていきましょう

売り場が先ではないアパレル型SPAが、小売り型SPAより成功しにくいのではないかと言う話は、以前書きましたが、皆さんのお考えはどうでしょうか?

・ 店頭情報の非数字的な部分の聞き取り、活用問題が、小売店型に比べて確立できていない
・ 段階的・部分的にSPA化していくステップを踏めない(最初から基本100%そのブランドでないといけない)
・ ”輸入商社・国内受け渡しのOEMメーカー”をスキップしようとしても、OEM・ODMによって、川上に上っていく機能を社内から手放してしまった

そこで、思い切って、アパレルの意識を一度横に置いて、小売り型SPAとして変身するか、非SPA化並行して模索するのは、どうでしょうか?

まず、アパレル型SPAは、直営店という、後付け?かもしれませんが、小売業(店舗)を持っていますよね。
SC売り場拡大で作ってしまった直営店(箱)。
当然、売り場は縮小再編されるでしょうが、その再編の仕方に活路はないでしょうか?
その店頭をもう一度見直すことが、出来ませんか?
従来、”ブランドの商品を売る直営店” から”アパレル機能を内政化している小売り” に完全に視点・立ち位置を変えてみるとか?
小売り起点のSPAの構築に切り替えることは、出来ないでしょうか?
トップダウン的(本社からの一方通行的)なブランドビジネスの直営店を持っているアパレルではなく、小売店舗をチェーン展開していて、各店舗からの情報吸い上げに心を砕き、それを具現化(商品化)する機能を持っている仕入れ本部的な。

前にも書きましたが、日本の衣料品業界は、アパレル(卸)が強すぎて、主導権を握り過ぎたことからの弊害が、今の状況を招いた部分が有りますよね。
なにもアパレル業界に限ったことではなく、又、日本人に限ったことではなく、今までやってきた慣れ親しんで、経験のある手法・概念を捨てることは、本当に難しいですよね。

”誰がアパレルを殺すのか” には、従来のアパレル流通のやり方の延長線上の方法での、明日は書かれていませんでした。
やっぱり、改善(Imporovement)程度では難しく、改革(Innovation)にならなければ現状打破できないですけど、経験が有る分だけ、その決断をすることは、なかなか難しいことですね。

次回は、その経験や過去を捨てる必要性について、続けていきたいと思います。

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