”誰がアパレルを殺すのか” を読んで ⑤
マトモなSPAって何?
分断されているアパレル業界の無駄を省いて、より早く、より売れる商品を的確にマーケットに出す。
元々アメリカから来た手法ですが、本家と日本では、結構履歴というか、状況が違います。
アメリカの事情
1980年台
繊維原材料から店頭まで、66週掛かっていた (そのうち55週が、在庫と移動期間)
不況・バリュー思考・低価格・製造不況・国際力低下
1984年
QR の考え方提唱されだす
目的 : 在庫・売れ残り・見切り・欠品の改善
1990年台
部分最適化のQRから、産業全体規模での統合最適化おSCM(サプライチェーンマネージメント)へ
GAPに代表されるように、小売りから、SPAが発生してきた
= 小売りが欲しい商品を企画・製造するようになってきた
日本の事情
1990年台にバブルがはじけた後、アメリカと同様のQRが広がりだしました。
この時点での、”日本の特殊事情 / アメリカ” は、
・参考上代・掛け率性 / オープンプライス・下代商売
・テリトリー制 / オープンマーケット
・返品・交換性(百貨店などの消化仕入れ) / 買い取り
・アパレル=アパレル卸 / アパレル=製造卸
・生産>卸>小売り / 生産>小売り
日本では、アパレル卸が、生産・流通の主導権を握ってきた影響で、ユニクロの様に小売りからのSPAも有る一方、アパレルが直営店を増やしてSPAを目指す部分も多い
何れも、”情報化の発達” の流れと深い関係が有るのは、言うまでも有りません。
でも、出発点が違いますよね。
SPAにて成功した、又は拡大しているとされる企業は、なぜ出来たのでしょうか?
① 現在も進行中の話でも有るのですが、小売業が、規模の拡大化する中で、欲しい商品を、企画>製造 の方向に川上に向かって内政化していくストーリー。
最初は、仕入れ先に欲しい企画の要望
その部分の一部を商社などに依頼し、OEM発注
OEM機能を内政化し、直貿化の比率を上げていく
製造部分を直営化
しかも、全ての商品をSPA化するのではなく、OEM仕入れ、選別仕入と併用しながら
② 仕入れ価格を抑えるために、規模を活用。
中国などでの紡績ロットは、4t と言う数字が出てきます。
これは、Tシャツなら3万枚程度です。
SC展開のファッション系ブランドで、同一素材でこの量をこなすことは非常に難しいことです。
しかもこの量では、紡績会社と価格交渉しようが有りません。
これで、素材を編立多場合、編み機1台で2週間程度です。
特に編立工場にとっては、美味しい仕事でもありません。
染色においても、日産10t、20tでは、中規模以下の染色工場ですから、4tの仕事の優先順位や関心は、想像できますよね。
欧米のファッション系ブランドの発注数量は、このラインを越えてて来れるのです。
日本でも、カジュアル系ブランドなら可能性はありますが、ファッション系と言われた場合、この段階でSPAと、軽々しくは言えなくなってしまいます。
なので、低価格を目標として、頑張って発注しても、実際は、余りコストを下げるパワーとはなりにくいのです。
③ ①と被りますが、規模が有るので、社内にSPAを運営できる人材をそろえられた。
川上~川中の業務を、以前は良し悪しを別にして分業化され、それぞれの専門職が居たものを、SPAでまとめようとすると、各生産段階に、品質・生産・コストに熟知した人材をそろえなければなりません。
それだけでは、分断されてしまいますから、それらの人材を、店頭を意識出来る統合者の配置も必要になります。
又、日本国内しか知らない専門家だと、海外で活躍するまでには、相当場数も要ってきます。
アメリカとの比較でも見えてきましたが、アパレル(アパレル卸)型SPA と 小売り型SPA の違いに、SPAと言う手法での成功へのヒントが有りそうに思えてきましたので、その辺を次に考察したいと思います。