”誰がアパレルを殺すのか” を読んで ⑧

”誰がアパレルを殺すのか” を読んで ⑧

改善(Imporovement)ではなく改革(Innovation)

前回の続きで、今までの経験、手法を捨てないと、次行けない件に関して。

人間、頭では分かっていても、今までの経験・習慣・手法を捨てて、ゼロスタートで、構築するのは、普通できませんよね。
私が、今から25年近く前に、中国で見て、感じた実体験を、少しお話させてください。

1990年代前半、多くの日本の縫製工場が、人手不足を理由に、大挙して中国に進出しました。
縫製工場だけでなく、二次加工屋さんや、件数は少ないですが編み染色工場も。
産地大移動です。
2000年代になって、気が付くと、日系工場が、看板は残っていても、中華マネージメントになっていたり、撤退した企業が、思いのほか少なくは無い状態になっていました
2000年代に、産地としての中国が、超便利の良い環境になった時のメインプレイヤーは、中国企業でした。
2010年代になり、ますます日系の影が薄れ、2015年には、日系企業は数えるしか残っていない状況に。

この最初の1990年代に感じたことですが、出られた企業でよく見受けられた状況
・ ”日本じゃxxx。 日本だったらxxxx。” と言う、今までの日本国内との比較での話と、結果が出ないことに対する言い訳。 (例えば中国の生地は品質悪いとか、中国人の考え方が違うとか、物流が不便とか。。)
・ 取りあえず、日本が一番なんで、そのままやり方を持ち込もうとする。

出られた方々は、日本国内で実績も有り、技術を熟知された方々が工場立ち上げ、運営に当たられたはずでしたが、問題は、経験が有るゆえに、今までの手法や、考え方を転換するのに抵抗心理や、怖さが有ったのではないかと思います。
見ていて、”その経験、技術、もったいない!!”と、思った事がしばしばでした。
私自身は、縫製のプロと言うには経験値の少ないと自覚していましたので、ある意味、楽だったのかもしれません。

そこで、私なりに気付いたことは、今までの経験にしがみ付いていたら、何も新しい事を構築できない。
今目の前にある現状で、どのように構築すれば、結果出せるのか?
材料と道具はそろっている。
でも、今までの組み立て方や習慣では、この中国にフィットしない。
ここは日本ではなく、中国なので、環境・条件が全く違うから、取りあえず、今までの経験や手法を、一度捨てよう、忘れよう。
但し、”郷に入っては、郷に従え” とは、全く違うことですので。

当時、日本式を理解していなくても、資質の高い中国人を好きなだけ使える状況にも助けられ、実験的な生産や生産管理を、色々試すことが出来ました。
すると、私の数少ない経験でも、一度捨てた経験を、全て活かすことが出来るのではないかと、思い始めました。

今まで持っていたものを捨てて、今現在、目の前にある条件下で結果を出そうと足掻いていくと、捨てた経験が、本当に無駄なく活かせるのではないかと感じだしたのです。
過去にしがみ付いていないで、一度捨てれば、その捨てた経験が、形は変われど、捨てることなく活かせるチャンスが一杯有ると感じたのですが、実際に捨てることは、本当に難しい、苦渋の決断が必要であることは、私も理解しています。

で、話を戻して、前回提唱させて頂いた
トップダウン的(本社からの一方通行的)なブランドビジネスの直営店を持っているアパレルではなく、小売店舗をチェーン展開していて、各店舗からの情報吸い上げに心を砕き、それを具現化(商品化)する機能を持っている仕入れ本部的な。
実験的にも、これをトライされるアパレルの方、いらっしゃらないでしょうか?

この手法が良いかは別ですが、今の状況を脱出するためには、今までの経験・手法を一度捨てて、ゼロから今のアパレル市場に向き合い、机上論でも良いので、何が市場から受け入れられるのかを、皆さんで考えて頂きたいと思うのです。
又その時には、一番優秀な人材を、この案件に充てて頂きたいとも思います。

上記の中国25年前の状況でもあったのが、(これは他業種さんとの交流会で)会社の大黒柱を、新規の案件には、なかなか投入しづらいということでした。
先が見えない物に、大黒柱の人材を投入すれば、現状の事業が影響を受けることを恐れての話で、勿論理解は出来ますが、現在の状況の悪さを考えれば、中途半端では、乗り越えれるものも、乗り越えれないのではないかと。

意識の改革が、まずもって優先かと思いますが、本当に難しいですよね。
2011年に中国からアセアンにシフトをし始めた弊社も、結局中国方式を一度捨てて再構築を模索するのに、私の気持ちの切り替えも含め、葛藤が有りました。
協力させた中国人が、25年前の日本人と同じ状況で、言ってることも、日本語と中国語の差だけで、内容が全く一緒なのは、トホホホホでしたし、日々、それと戦っている感も有ります。

又、最も気を付けて頂きたいのは、”どうやって消費者から情報を聞き出し、活用するか” であることと考えます。
従来のアパレル型SPAに、最も抜けていた部分だと思からです。

今、さらにEC対応のSPAが始動しだしています。
SNSの中で、ラインやツイッターと言ったコミュニケーションツールは、消費者が比較的気軽に意見や情報を発信できるツールです。
店頭での、数字化できない情報の収集と活用のノウハウが無いと、EC上でも難しいのではないかとも、思われます。

さて、アパレル型SAP今後について、私個人の考え方を色々書いてきましたが、全てのアパレル商品が、SPAと言う商流に適合しているわけではないですよね。
次回は、”非SPAのススメ” と言う部分について、考えていきたいと思います。

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